金融資産運用の第一歩|GDP・日銀短観・金融政策の基本をわかりやすく解説

finance-economy-basics CHAPTER03 金融資産運用

「景気が良いって、何を見ればわかるの?」「金利や円高・円安のニュースを聞いても、自分の資産運用とどう関係するのかピンとこない」と感じたことはありませんか。GDPや日銀短観、金融政策など、経済ニュースには専門用語が多く、つながりがわからないまま投資を始めてしまう人も少なくありません。景気の流れを知らないと、金利や為替が動いたときに慌ててしまうこともあります。

本記事では、GDPや景気動向指数、日銀短観などの主な経済指標から、景気と金利・物価・株価・為替相場の関係、さらに日本銀行の金融政策と国の財政政策までをわかりやすく解説します。読み終えるころには、経済ニュースの数字が景気のどんな動きを表しているのかを読み解けるようになります。

金融・経済のつながりという土台を身につけて、自信を持って金融資産運用に取り組んでいきましょう。

金融資産運用の前に知りたい経済指標|GDP・景気動向指数・日銀短観

GDPと経済成長率|三面等価と最大の項目・民間最終消費支出

資産運用を始めるなら、まず景気の良し悪しを測る「ものさし」を知っておきましょう。その代表がGDP(国内総生産)です。GDPとは、国内の経済活動によって新たに生み出された財やサービスの付加価値の合計のことで、内閣府が年4回発表しています。

GDPが景気のものさしになるのは、国全体でどれだけの価値が生み出されたかを1つの数字で表せるからです。GDPは、生産面、分配面、支出面の3つの方向から見ることができ、どこから見ても金額は同じになります。これを「三面等価の原則」といいます。モノやサービスが作られると、その代金は給料や利益として誰かに分配され、最終的には誰かがお金を出して買っているためです。支出面から見たGDPは、民間需要(民間最終消費支出、民間住宅、民間企業設備、民間在庫品増加)、公的需要(政府最終消費支出、公的固定資本形成、公的在庫品増加)、財・サービスの純輸出(輸出−輸入)に分けられます。このなかで最も大きい項目は民間最終消費支出で、GDPの50〜60%を占めます。つまり、日本の景気は私たちの毎日の買い物に大きく左右されているのです。

GDPの伸び率を「経済成長率」といい、一般的には実質GDPの伸び率を指します。実質GDPとは、名目GDP(GDPを時価で評価したもの)から物価変動の影響を取り除いたものです。たとえば、名目GDPが前年より3%増えても、同じ期間に物価が2%上がっていれば、実質の成長は約1%にとどまります。モノの値段が上がった分だけ金額がふくらんでいるので、生産量が本当に増えた分は1%程度ということです。

ニュースで「経済成長率」と聞いたら、物価の影響を除いた実質の数字かどうかを意識してみましょう。物価が上がっている時期は、名目の数字だけを見ると景気を実際より良く見てしまうことがあります。GDPは、景気の全体像をつかむための最も基本的な指標だと覚えておきましょう。

名目GDPと実質GDPの違いなど、GDPのくわしい解説は「GDPとは?国内総生産をわかりやすく」をご覧ください。

景気動向指数とは|先行・一致・遅行の指標とCI・DI

GDPは年4回の発表ですが、景気の変化をもっと早くつかむための指標が「景気動向指数」です。景気動向指数は、景気の状況を総合的に見るために複数の指標を統合したもので、内閣府が毎月発表しています。

景気動向指数には、景気に敏感に動く30の指標が使われており、動くタイミングによって3つのグループに分かれています。景気に先行して動く「先行指数」、ほぼ一致して動く「一致指数」、遅れて動く「遅行指数」です。たとえば、家を建てる動きは景気の先行きを映すため、新設住宅着工床面積は先行系列に入ります。新規求人数、東証株価指数(TOPIX)、消費者態度指数も先行系列です。一方、有効求人倍率は一致系列、完全失業率や消費者物価指数は遅行系列です。新設住宅着工床面積は先行、有効求人倍率は一致、完全失業率は遅行という違いは、間違えやすいので注意しましょう。企業はまず求人を出し、景気が悪くなってから人員を減らすため、失業率の変化は遅れて表れるのです。

景気動向指数には、CI(コンポジット・インデックス)とDI(ディフュージョン・インデックス)の2種類があります。CIは景気変動のテンポや大きさをつかむための指標で、一致指数が上昇していれば景気は拡張局面、低下していれば後退局面と判断します。DIは景気の各経済部門への波及度合いを表す指標で、一致指数のDIが50%を上回っていれば拡張局面、下回っていれば後退局面です。たとえば、一致系列の10指標のうち7つが3カ月前より上昇していれば、DIは70%となり、景気は拡張局面と判断できます。

以前はDIが中心でしたが、現在はCIを中心に発表されています。景気の転換点を判断するときは、ヒストリカルDIという別のDIが使われます。景気動向指数は、景気の「今」と「これから」を知るための身近な手がかりになります。

CIとDIの見方は、「景気動向指数とは?CI・DIの見方」で詳しく解説しています。

日銀短観・マネーストック・物価指数・国際収支統計

GDPや景気動向指数のほかにも、ニュースでよく耳にする経済指標があります。それぞれ「誰が」「どのくらいの頻度で」発表しているかを押さえておくと、ニュースが理解しやすくなります。

まず「日銀短観(全国企業短期経済観測調査)」は、日本銀行が年4回(3月、6月、9月、12月)、資本金2,000万円以上の民間企業(金融機関を除く)から選んだ企業に、現状と3カ月後の景気についてアンケートを行い、集計したものです。結果は原則として4月、7月、10月の初旬と12月の中旬に公表されます。なかでも注目されるのが「業況判断DI」で、業況が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を差し引いて求めます。たとえば、「良い」が30%、「悪い」が18%なら、業況判断DIは+12です。プラスなら景気が良いと感じている企業のほうが多いということです。

次に「マネーストック」は、個人や法人(金融機関以外)、地方公共団体などが持っている通貨の総量で、日本銀行が毎月発表しています。国や金融機関が持っているお金は含まれません。

物価の動きを表すのが「物価指数」です。企業間で取引される商品(サービスは除く)の価格を表す「企業物価指数」は日本銀行が毎月発表し、原油価格や為替相場の影響を受けるため、消費者物価指数より変動が大きくなります。一般の消費者が買う商品やサービスの価格を表す「消費者物価指数」は総務省が毎月発表し、消費税なども物価に含まれます。そのため、消費税率が上がると消費者物価指数も上がります。

最後に「国際収支統計」は、外国との経済取引を記録・集計した統計で、国際通貨基金(IMF)のマニュアルに沿って作成され、財務省と日本銀行が共同で発表しています。発表機関を整理しておくと、内閣府はGDPと景気動向指数、日本銀行は日銀短観・マネーストック・企業物価指数、総務省は消費者物価指数です。

景気が動くと金利・物価・株価・為替はどうなる?

金融市場のしくみ|短期金融市場と長期金融市場

景気とマーケットの関係を知る前に、お金がやりとりされる「金融市場」のしくみを見ておきましょう。金融市場とは、お金の貸し借りをしている場のことで、取引期間が1年未満の「短期金融市場」と、1年以上の「長期金融市場」に分かれます。

短期金融市場は、さらに2つに分かれます。1つは、銀行や証券会社などの金融機関だけが参加できる「インターバンク市場」で、代表的なのがコール市場です。もう1つは、一般の企業も参加できる「オープン市場」です。一方、長期金融市場にあたるのが証券市場で、債券市場や株式市場が含まれます。私たちが株式や債券に投資するときは、この長期金融市場で取引していることになります。短期金融市場は主に金融機関や企業が一時的なお金の過不足を調整する場、長期金融市場は企業や国が長く使うお金を集める場と考えると、違いがイメージしやすいでしょう。

インターバンク市場で特に大切なのが、コール市場の「無担保コール翌日物レート」です。これは、金融機関どうしが「今日借りて明日返す」というごく短い期間でお金を貸し借りするときの金利で、日本を代表する短期金利です。日本銀行は、この金利を金融政策の目標として誘導しています。たとえば、日本銀行が政策金利を引き上げると、まず無担保コール翌日物レートが上がり、それが銀行の預金金利や住宅ローンの変動金利などにも少しずつ広がっていきます。

つまり、金融機関どうしの短い貸し借りの金利が、めぐりめぐって私たちの預金や借入の金利に影響しているということです。ニュースで「政策金利」や「短期金利」という言葉を聞いたら、私たちの家計にもつながる金利の出発点だと考えるとわかりやすいでしょう。

景気の拡張・後退とマーケットの関係

景気は、金利、物価、株価、為替相場と深くつながっています。基本の関係は、景気が良くなる(拡張する)と、金利・物価・株価は上がり、為替相場は円高になるというものです。景気が悪くなる(後退する)と、それぞれ反対の動きになります。

まず金利です。景気が良くなると消費意欲が高まり、企業は原材料を仕入れたり設備投資をしたりするためにお金を借りようとします。お金を借りたい人が増えるので、金利は上がります。次に物価です。モノがよく売れるようになると、需要と供給のバランスをとるために物価が上がり、インフレになります。反対に景気が悪くなると物価は下がり、デフレになります。株価は、景気が良くなると企業の業績が良くなると期待されるため上がります。

為替相場はどうでしょうか。日本の景気が良く、企業の業績が良いと、海外の投資家が日本企業の株式を買おうとして、外貨を円に換えます。円を欲しい人が増えるので、円の価値が上がって円高になります。円高になると、輸入品は安く買えるようになります。たとえば、1ドル=150円から140円の円高になれば、100ドルの輸入品は15,000円から14,000円で買えるようになり、1,000円安く買えます。反対に景気が悪くなると円安になり、輸入品の値段は上がります。

もちろん、実際のマーケットはさまざまな要因で動くので、いつもこのとおりになるわけではありません。それでも、景気の拡張なら「金利・物価・株価が上がり、円高」、後退ならその逆という基本の形を知っておくと、ニュースや相場の動きを読み解く助けになります。

金利と為替が動く要因|インフレの2つの種類

金利や為替相場は、景気だけでなく、さまざまな要因で動きます。金利は、お金を借りたい人と貸したい人のバランス(資金の需給)で決まるというのが基本の考え方です。お金を借りたい人が多ければ金利は上がり、貸したい人が多ければ金利は下がります。

たとえば、物価が上がると、同じモノを買うのにより多くのお金が必要になるため、資金の需要が増えて金利は上がります。円安になって輸入品の価格が上がったときも、同じように資金の需要が増えて金利が上がります。一方、市場に出回るお金(通貨量)が増えると、お金を貸したい人が増えるため金利は下がります。為替相場は、景気のほか、国内の金利や物価によっても動きます。国内の金利が上がると、利息を多く受け取れる円を買う動きが強まって円高になり、金利が下がると円安になります。また、物価が上がるとお金の価値が下がるため、円を売る動きが強まって円安になります。

物価が上がり続けるインフレには、原因によって2つの種類があります。需要が大きく伸びることで起こるのが「ディマンド・プル型インフレ」、原材料価格や賃金の上昇によって起こるのが「コスト・プッシュ型インフレ」です。たとえば、景気が良くなってモノが売れすぎて値段が上がるのはディマンド・プル型、原油価格が上がって電気代やガソリン代が上がるのはコスト・プッシュ型です。

同じインフレでも、景気が良いときに起こるディマンド・プル型と、景気が良くなくても起こるコスト・プッシュ型では、家計への影響が違います。物価が上がっている原因が「需要」なのか「コスト」なのかを見分けることが、経済ニュースを正しく理解するポイントです。

金融政策と財政政策|日銀と国の景気対策

公開市場操作|売りオペと買いオペで金利はどう動く?

景気や物価が大きく揺れすぎないように、日本銀行は金融政策を行っています。金融政策とは、物価の安定などを目的として日本銀行が行う政策のことです。その代表が「公開市場操作(オペレーション)」で、日本銀行が国債などを売り買いして、市場に出回るお金の量を調整します。

公開市場操作には、「売りオペレーション(売りオペ)」と「買いオペレーション(買いオペ)」があります。売りオペは、日本銀行が持っている国債などを金融機関に売って、その代金を受け取ることで、市場に出回るお金を減らす操作です。市場のお金が減ると、お金を借りにくくなるため金利は上がります。買いオペは反対に、日本銀行が金融機関の持っている国債などを買って代金を支払い、市場に出回るお金を増やす操作です。市場のお金が増えると、お金を借りやすくなるため金利は下がります。

たとえば、日本銀行が銀行から国債を1兆円買ったとしましょう。銀行には1兆円のお金が入るので、そのお金を企業や個人に貸し出そうとします。お金を貸したい側が増えるので、買いオペによって市場のお金が増え、金利が下がるのです。金利が下がると、企業は設備投資のためにお金を借りやすくなり、景気を支える効果が期待できます。反対に、景気が過熱して物価が上がりすぎているときは、売りオペで市場のお金を減らし、金利を上げて景気を落ち着かせます。

つまり、景気が悪いときは買いオペでお金を増やし、景気が良すぎるときは売りオペでお金を減らすということです。「日銀が債券を買えば金利は下がり、売れば金利は上がる」と覚えておくと、ニュースの意味がぐっとわかりやすくなります。

金融政策と財政政策の違いは、「金融政策とは?財政政策との違い」で詳しく解説しています。

預金準備率操作と財政政策

日本銀行の金融政策には、公開市場操作のほかに「預金準備率操作」もあります。また、国や地方公共団体も、景気を安定させるために「財政政策」を行っています。金融政策は日本銀行、財政政策は国や地方公共団体が担っているという違いを押さえておきましょう。

金融機関は、受け入れた預金の一定割合を日本銀行に預けることが義務づけられています。この割合を「預金準備率」といい、これを引き上げたり引き下げたりして市場のお金の量を調整することを「預金準備率操作(支払準備率操作、法定準備率操作)」といいます。預金準備率を引き上げると、金融機関が貸し出しに回せるお金が減るため、市場のお金が減って金利は上がります。引き下げると、その反対に金利は下がります。なお、日本では預金準備率は1991年以降変更されておらず、現在の金融政策は公開市場操作が中心です。

財政政策は、国や地方公共団体が行う政策で、たとえば不景気のときに行う公共投資や減税などがあります。道路や橋をつくる公共事業を増やせば、建設会社などの仕事が増え、そこで働く人の給料も増えます。減税をすれば、家計や企業が使えるお金が増え、消費や投資が活発になります。たとえば、所得税の減税で手取りが増えれば、その分を買い物に使う人が増え、景気の下支えになります。反対に、景気が過熱しているときは、公共投資を減らしたり増税したりして、景気を落ち着かせることもあります。

このように、日本銀行は金利やお金の量を通じて、国は税金や公共投資を通じて、それぞれ景気に働きかけています。金融政策と財政政策は、景気を支える車の両輪のような関係だと考えるとよいでしょう。

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まとめ|経済のつながりを知って資産運用に生かそう

金融・経済の基本ポイントを振り返ろう

金利、物価、株価、為替相場は、景気を中心にお互いにつながって動いています。このつながりを知っておくことが、金融資産運用の土台になります。最後に、この記事のポイントを振り返っておきましょう。

景気を測る代表的な指標がGDPで、内閣府が年4回発表し、最も大きい項目は民間最終消費支出です。景気動向指数は内閣府が毎月発表し、先行・一致・遅行の3つに分かれます。新設住宅着工床面積は先行、有効求人倍率は一致、完全失業率は遅行です。日銀短観は日本銀行が年4回行う企業アンケートで、業況判断DIが注目されます。マネーストックと企業物価指数は日本銀行、消費者物価指数は総務省が毎月発表しています。

金融市場は、1年未満の短期金融市場と1年以上の長期金融市場に分かれ、無担保コール翌日物レートが日本を代表する短期金利です。景気が拡張すると金利・物価・株価が上がって円高になり、後退するとその逆になります。日本銀行は、売りオペで市場のお金を減らして金利を上げ、買いオペでお金を増やして金利を下げます。国は公共投資や減税といった財政政策で景気を支えています。

まずは、次に経済ニュースを見たときに、その数字が景気のどんな変化を表しているのかを考えてみてください。 景気や金利の流れが読めるようになると、預金、株式、債券、外貨など、どの資産をどう持つかを判断しやすくなります。経済のつながりを味方につけて、資産運用に生かしていきましょう。

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