「ニュースで『日経平均先物』という言葉を聞くけれど、意味がよくわからない」「金の価格が上がっていると聞いて、金投資が気になっている」という人は多いのではないでしょうか。デリバティブや金投資は、しくみを知らないと難しく感じますが、資産を守ったり分散したりするのに役立つ一面もあります。一方で、使い方を間違えると大きな損失につながることもあります。
本記事では、先物取引・オプション取引・スワップ取引というデリバティブ取引の基本から、オプションのプレミアムが動く理由、金の価格の決まり方、金地金・金貨・純金積立の違いと税金までをわかりやすく整理します。具体的な数字を使って説明するので、読み終えるころには、ニュースの意味が理解でき、自分に合った金の買い方を選べるようになります。
しくみとリスクを理解したうえで、自分の目的に合った方法を選ぶことが、デリバティブや金投資と上手に付き合うための近道です。まずはデリバティブの基本から一緒に確認していきましょう。
デリバティブとは?|株や債券から生まれた金融商品
デリバティブ取引とは|先物・オプション・スワップの3種類
デリバティブ取引とは、株式や債券、金利、通貨などの金融商品から派生して生まれた金融商品を扱う取引のことです。 「デリバティブ」は英語で「派生したもの」という意味で、日本語では金融派生商品と呼ばれます。
デリバティブ取引の代表的なものには、先物取引・オプション取引・スワップ取引の3つがあります。先物取引は、将来の決まった時点に、決めた価格で売買することを約束する取引です。オプション取引は、将来に決まった価格で売買する「権利」そのものを売買する取引です。スワップ取引は、金利や通貨から生まれるお金の流れ(キャッシュフロー)を交換する取引です。どれも、もとになる株式や金利などの価格の動きによって、損益が決まるのが特徴です。もとになる資産のことを、原資産といいます。デリバティブは、値動きのリスクを減らすために使われることもあれば、少ない資金で大きな利益を狙うために使われることもあります。
たとえば、ニュースで「日経平均先物が値上がりしている」と聞くことがあります。これは、日経平均株価そのものではなく、日経平均株価をもとにした先物取引の価格のことです。また、定期預金にデリバティブを組み合わせた仕組預金のように、身近な金融商品の中にデリバティブが組み込まれていることもあります。
デリバティブは、しくみが複雑で、使い方によってはリスクが大きくなる取引です。まずは3つの取引の違いを押さえることから始めると、ニュースや金融商品の説明がぐっと理解しやすくなります。デリバティブは、もとになる資産を実際に持たなくても取引できるのも大きな特徴です。個人が取引する場合は、証券会社で専用の口座を開き、しくみやリスクの説明を受けたうえで始めるのが一般的です。
先物取引|将来の売買価格をいま決めておく取引
先物取引とは、将来の一定の時点に、特定の商品を、いま決めた価格で、決めた数量だけ売買することを約束する取引です。 たとえば、5月の時点で、8月に受け渡す商品の価格をあらかじめ決めておく、というイメージです。
先物取引には、いくつかの特徴があります。証券取引所で取引され、取引する商品の内容などが標準化されています。また、決済の期限(限月)までに反対売買を行い、その差額だけを受け渡す差金決済が中心です。買い建てている場合は転売、売り建てている場合は買い戻しによって取引を終えます。先物取引は、目的によって使い方が分かれます。現物の価格変動によるリスクを回避・軽減するためのヘッジ取引、現物と先物のように異なる市場の価格のずれを利用して利益を狙う裁定取引(アービトラージ取引)、将来の価格を予想して短期的な利益を狙うスペキュレーション取引です。裁定取引では、割安なほうを買って割高なほうを売り、価格のずれが縮まったところで反対売買をして利益を確定します。
たとえば、株を100万円分持っていて、これから値下がりしそうだと心配しているとします。このとき、先物を売り建てておけば、実際に株価が10%下がって株で10万円の損が出ても、先物で得た利益でおおむね相殺できます。これを売りヘッジといい、値下がりによる損失を先物で打ち消すしくみです。反対に、将来株を買う予定がある人が、値上がりに備えて先物を買い建てておくことを買いヘッジといいます。将来の価格が上がったら、先物を転売して得た利益で、値上がりした株の購入代金の一部をまかなえるしくみです。
先物取引は、使い方次第でリスクを減らす道具にもなれば、大きなリスクを取る手段にもなります。ヘッジ取引は「保険」のような役割、スペキュレーション取引は「予想に賭ける」取引と考えると、違いがわかりやすいでしょう。先物取引は、少ない証拠金で大きな金額の取引ができるため、予想が外れたときの損失も大きくなる点に注意が必要です。
オプション取引とスワップ取引|「権利」と「交換」のしくみ
オプション取引|コールとプット、買い手と売り手の損益
オプション取引とは、将来の一定の時点に、特定の商品を決められた価格(権利行使価格)で売買する「権利」を売買する取引です。 先物取引が「売買の約束」であるのに対し、オプション取引は「売買してもよい権利」を取引する点が違います。権利なので、損になる場合は使わずに放棄することもできます。
買う権利をコール・オプション、売る権利をプット・オプションといいます。取引所に上場されている上場オプションと、相対で取引される店頭オプションがあります。また、権利を使える日が満期日だけのものをヨーロピアンタイプ、取引開始日から取引最終日までいつでも使えるものをアメリカンタイプといい、日経225オプションやTOPIXオプションはヨーロピアンタイプです。オプションの買い手は、売り手にプレミアム(オプション料)を支払って権利を手に入れます。買い手の損失は支払ったプレミアムに限られ、利益は無限定です。 一方、売り手はプレミアムを受け取る代わりに、買い手が権利を使ったときにそれに応じる義務を負います。売り手の利益は受け取ったプレミアムに限られ、損失は無限定です。
たとえば、「1年後に1株4,000円で買える権利(コール・オプション)」を、プレミアム200円で買ったとします。1年後に株価が5,000円になっていれば、権利を使って4,000円で買い、5,000円で売ることで、1株あたり1,000円からプレミアム200円を引いた800円の利益になります。反対に株価が3,000円に下がれば、権利を使わずに放棄すればよく、損失は支払ったプレミアムの200円だけで済みます。株を直接4,000円で買っていれば1,000円の損になるところを、200円の損に抑えられるわけです。売り手から見ると、最大の利益は受け取った200円で、株価が上がるほど損失は大きくなります。
オプションの買い手は「損失が限られている」、売り手は「利益が限られている」と覚えておきましょう。売り手は損失が無限定になるため、特にリスクが大きい取引です。オプションは、損失を限定しながら値上がりや値下がりに備えたい場面で役立ちますが、プレミアムは時間がたつほど減っていくことが多いので、長く持てば得というわけではありません。
オプションのプレミアムが動く理由|価格・期間・ボラティリティ
オプションのプレミアム(オプション料)は、もとになる資産の価格や満期までの期間、値動きの激しさなどによって変動します。 コールとプットで動き方が違う要因もあるので、整理して覚えましょう。
プレミアムが変動する主な要因は4つあります。1つ目は、もとになる資産(原資産)の価格です。原資産の価格が上がると、買う権利であるコールのプレミアムは上がり、売る権利であるプットのプレミアムは下がります。2つ目は、権利行使価格です。原資産の時価から見て権利行使価格が高いほど、コールのプレミアムは下がり、プットのプレミアムは上がります。3つ目は、満期までの残りの期間(残存期間)で、残存期間が長いほど、コールもプットもプレミアムは上がります。 4つ目はボラティリティ(価格変動の激しさ)で、ボラティリティが大きいほど、コールもプットもプレミアムは上がります。
たとえば、株価が4,000円のときに「4,000円で買える権利」と「4,500円で買える権利」を比べると、より安く買える4,000円の権利のほうが価値は高く、プレミアムも高くなります。また、満期まで1か月の権利と1年の権利では、1年あるほうが株価が大きく動くチャンスが多いので、プレミアムは高くなります。値動きの激しい株ほど、プレミアムが高くなるのも同じ理由です。プット・オプションでは反対に、売れる価格が高い権利ほど価値が高く、プレミアムも高くなります。
プレミアムの動き方は、「権利を使って得をする可能性が高いほど、プレミアムは高くなる」と考えると理解しやすくなります。残存期間とボラティリティは、コールとプットのどちらも同じ方向に動くことを押さえておきましょう。反対に、原資産の価格と権利行使価格は、コールとプットで逆の方向に動きます。
スワップ取引|金利スワップと通貨スワップ
スワップ取引とは、金利や通貨から生じるキャッシュフロー(お金の流れ)を交換する取引です。 主に企業や金融機関が、金利や為替のリスクを管理するために利用しています。
スワップ取引の代表的なものに、同じ通貨で変動金利と固定金利を交換する金利スワップと、異なる通貨の元本と利息を交換する通貨スワップがあります。金利スワップでは、元本そのものは交換せず、金利の支払いだけを交換するのが一般的です。通貨スワップでは、たとえば円と米ドルのように、異なる通貨の元本と利息をまとめて交換します。どちらも、取引する相手どうしが、それぞれに都合のよい条件のお金の流れに入れ替えることで、リスクを減らしたり、資金を調達しやすくしたりするのが目的です。お金そのものを売り買いするのではなく、「支払いの約束」を入れ替えるところがポイントです。
たとえば、A社は変動金利でお金を借りていて、金利が上がるのが心配だとします。一方、B社は固定金利でお金を借りていて、金利が下がるなら変動金利のほうがよいと考えています。このとき、A社とB社が金利の支払いだけを交換すれば、A社は実質的に固定金利、B社は実質的に変動金利で借りているのと同じ状態になります。これが金利スワップです。通貨スワップは、たとえば日本の企業が海外でドル建ての資金を調達するときに、ドルの元本と利息を円に交換して、為替の影響を抑えるといった使われ方をします。
スワップ取引は、個人が直接行うことはほとんどありませんが、銀行のローンや外貨建ての商品の裏側で使われていることがあります。「交換する取引」と覚え、金利なら金利スワップ、通貨なら通貨スワップと区別しておきましょう。しくみを知っておくと、企業のニュースや金融機関の商品説明も読みやすくなります。
金利が動くことで生じるリスクについては、「金利変動とは?お金の価値が変わる理由」で解説しています。
金投資の基本|金地金・金貨・純金積立の違い
金の価格のしくみ|1トロイオンスあたりの米ドル価格
金は、国際的には1トロイオンスあたりの米ドル価格で表示されます。 そのため、日本で買う金の価格は、国際的な金の価格と、円とドルの為替レートの両方の影響を受けます。
トロイオンスは、金などの貴金属に使われる重さの単位で、1トロイオンスは約31.1グラムです。日本国内の金の価格は、国際価格を円に換算し、1グラムあたりの価格で表示されるのが一般的です。金の価格は、金を売買する会社のホームページなどで、毎日確認できます。つまり、国際的な金の価格が変わらなくても、円安になれば国内の金価格は上がり、円高になれば下がります。 金は、株や債券のように利息や配当を生まない一方で、世界のどこでも価値が認められる「実物資産」です。そのため、景気や通貨の先行きが不安なときに買われやすいという特徴があります。発行する会社や国の信用に左右されないことも、金ならではの強みです。為替の動きについては、円安・円高で何が変わる?|外貨建て金融商品のしくみをわかりやすく整理もあわせてご覧ください。
たとえば、国際価格が1トロイオンス4,000ドルで、為替レートが1ドル150円だとします。1トロイオンスは約31.1グラムなので、1グラムあたりの価格は、4,000ドル×150円÷約31.1グラムで、約1万9,290円になります。同じ4,000ドルのままでも、1ドル160円の円安になれば、1グラムあたり約2万576円に上がります。反対に国際価格が上がっても、それ以上に円高が進めば、国内の金価格は下がることもあるのです。
金の価格を見るときは、国際価格だけでなく為替レートもあわせて確認することが大切です。金を持つことは、ドルの値動きの影響も受けることになると覚えておきましょう。
金への投資方法と税金|売却益は譲渡所得か雑所得か
金に投資する方法には、金地金・金貨・純金積立などがあります。 買い方によって、必要な金額や、売ったときの税金の扱いが変わります。
金地金は、金の延べ棒を買う方法です。まとまった金額が必要ですが、現物の金をそのまま持つことができます。金貨は、カナダのメイプルリーフやオーストラリアのカンガルーなどの金貨を買う方法で、金地金より少ない金額から買えます。金地金は、重さが大きいほど1グラムあたりの手数料が割安になることが多い一方、小さな地金や金貨は手数料が割高になりやすい点も覚えておきましょう。金地金や金貨を売って得た利益は、譲渡所得になります。 純金積立は、毎月一定の金額ずつ金を買う方法で、ドル・コスト平均法で買い続けることになります。月々数千円程度から始められることが多く、買った金は業者が保管してくれるので、手元で管理する手間がかかりません。純金積立の売却益は、個人が営利目的で頻繁に売却する場合は雑所得、年に数回売却する程度なら譲渡所得になります。
たとえば、純金積立で毎月1万円ずつ、金の価格が1グラム1万8,000円、2万円、1万6,000円のときに買ったとします。買えた金は合わせて約1.68グラムで、3万円で買ったので平均購入単価は約1万7,851円です。3回の価格を単純に平均した1万8,000円より、安く買えたことになります。価格が下がったときに多く買えるのが、ドル・コスト平均法のメリットです。ドル・コスト平均法については、株を始める前に知りたいこと|株式のしくみと取引ルールをわかりやすくでも紹介しています。
まとまったお金で現物を持ちたいなら金地金や金貨、少しずつ買いたいなら純金積立が向いています。売るときの税金は、買い方や売り方によって変わるので、事前に確認しておきましょう。また、金地金や金貨は、売買のときに手数料がかかったり、買値と売値に差があったりするので、コストもあわせて比べると安心です。
株式や投資信託など、ほかの金融商品の税金は「投資の利益にかかる税金はいくら?|金融商品と税金のしくみ」で整理しています。
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まとめ|デリバティブと金投資のしくみを知ってリスクに備えよう
デリバティブと金投資のポイントを振り返ろう
デリバティブ取引はリスクを減らす道具にも大きなリスクを取る手段にもなり、金投資は通貨や景気の不安に備える実物資産として役立ちます。 最後に、この記事のポイントを振り返りましょう。
デリバティブ取引には、先物取引・オプション取引・スワップ取引があります。先物取引は、将来の売買価格をいま決めておく取引で、限月までの反対売買による差金決済が中心です。オプション取引は売買する権利を取引するもので、買い手の損失はプレミアムに限られ、売り手の利益はプレミアムに限られます。 プレミアムは、残存期間が長いほど、ボラティリティが大きいほど、コールもプットも上がります。スワップ取引は、金利や通貨のキャッシュフローを交換する取引で、主に企業や金融機関が使います。金は1トロイオンスあたりの米ドル価格で表示され、国内価格は為替の影響を受けます。金地金や金貨の売却益は譲渡所得、純金積立の売却益は売り方によって雑所得か譲渡所得になります。金は利息を生まない代わりに、発行体の信用に左右されない実物資産です。
たとえば、持っている株の値下がりに備えたいなら先物の売りヘッジ、少ない損失で値上がりを狙いたいならオプションの買い、というように、デリバティブは目的によって使い分けられます。金は、株や債券とは違う値動きをすることが多いので、資産の一部として持つことで、全体のリスクを分散する効果が期待できます。ただし、金は利息や配当を生まないので、資産の大部分を金にするのではなく、一部にとどめるのが一般的です。
しくみとリスクを理解したうえで、自分の目的に合った方法を選ぶことが、デリバティブや金投資と上手に付き合うための近道です。まずは、ニュースで聞く先物の価格や金の価格が、何を表しているのかを確認するところから始めてみてください。そのうえで、デリバティブは損失の範囲を、金投資は手数料と税金を確認してから、無理のない金額で取り組みましょう。

