株を始める前に知りたいこと|株式のしくみと取引ルールをわかりやすく

stock-trading-basics CHAPTER03 金融資産運用

「株を始めてみたいけれど、何から覚えればいいのかわからない」「注文の出し方や、ニュースで聞く日経平均株価の意味がよくわからない」と感じている人は多いのではないでしょうか。株式投資には、100株単位で買うことや、売買が成立する順番など、知っておきたいルールがたくさんあります。しくみを知らないまま始めると、思わぬ価格で売買してしまうこともあります。

本記事では、株主の権利や証券取引所の市場区分といった基本から、指値注文と成行注文、受渡しのルール、少額で買える株式ミニ投資とるいとう、信用取引のしくみ、日経平均株価やPER・ROEなどの指標までをわかりやすく整理します。具体的な数字を使って説明するので、読み終えるころには、株の買い方と銘柄選びの基本がひととおりわかります。

株式のしくみとルールを理解して、自分に合った方法で投資を始めることが、株式投資を長く続けるための近道です。まずは株式の基本から一緒に確認していきましょう。

株式とは?|株主の権利と証券取引所のしくみ

株式とは|株主の3つの権利と100株単位の単元株

株式とは、株式会社がお金を集めるために発行する証券で、株式を買った人を株主といいます。 株主になると、会社に対していくつかの権利を持つことができます。

株主の権利は、大きく3つあります。1つ目は、株主総会で会社の経営に参加できる議決権です。2つ目は、会社が得た利益(剰余金)の分配を受けられる剰余金分配請求権で、配当金を受け取る権利のことです。3つ目は、会社が解散したときに、持っている株数に応じて残った財産の分配を受けられる残余財産分配請求権です。また、株式の売買は、原則として単元株(1単元=100株)の整数倍で行います。 1株ずつ自由に買えるわけではない点に注意しましょう。株主の権利は持っている株数に応じて決まるため、多く持つほど議決権や受け取る配当金も多くなります。

たとえば、株価が1,500円の会社の株を買う場合、1単元の100株を買うには15万円が必要です。200株なら30万円、300株なら45万円と、100株ごとに金額が増えていきます。もし1株あたり年20円の配当がある会社なら、100株で年2,000円(税引前)の配当金を受け取れる計算です。株価が高い会社ほど、最初に必要なお金も大きくなるということです。株を買う前には、株価だけでなく「100株でいくらになるか」を確認しておくことが大切です。

株主になると、配当金を受け取ったり、株主総会で意見を伝えたりできます。株式は100株単位で買うのが基本なので、まずは気になる会社の株価に100を掛けて、必要な金額を計算してみましょう。

配当金や売却益にかかる税金は、「投資の利益にかかる税金はいくら?|金融商品と税金のしくみ」で解説しています。

証券取引所と市場区分|プライム・スタンダード・グロースの違い

株式は、ふつう証券取引所を通じて売買されます。 東京証券取引所(東証)には、会社の規模や特徴に合わせて、いくつかの市場が用意されています。

国内の証券取引所は、東京のほか、名古屋や福岡などにあります。東証には、一般の投資家向けのプライム市場・スタンダード市場・グロース市場の3つと、プロの投資家向けのTOKYO PRO Marketがあります。 プライム市場は、多くの機関投資家が投資できる規模と、より高いガバナンス(企業統治)の水準を備えた会社向けの市場です。スタンダード市場は、一定の規模と基本的なガバナンスの水準を備えた会社向け、グロース市場は、高い成長の可能性がある一方で、事業の実績から見て相対的にリスクが高い会社向けの市場です。なお、名古屋証券取引所には、プレミア市場・メイン市場・ネクスト市場の3つの市場があります。

たとえば、新しく上場するための基準(一部)を見ると、プライム市場は株主数800人以上、流通株式時価総額100億円以上が必要です。スタンダード市場は株主数400人以上、流通株式時価総額10億円以上、グロース市場は株主数150人以上、流通株式時価総額5億円以上です。プライム市場ほど基準が厳しく、大きな会社が集まっていることがわかります。

株を選ぶときは、その会社がどの市場に上場しているかも参考になります。安定した大企業ならプライム市場、成長性を重視するならグロース市場というように、市場区分は会社の特徴を知る手がかりになります。上場を続けるための基準(上場維持基準)もあるので、上場している会社は一定の条件を満たしているといえます。

株の買い方|注文方法と売買のルール

指値注文と成行注文|売買が成立する3つの原則

上場株式の注文方法には、値段を決めて注文する指値注文と、値段を決めずに注文する成行注文の2つがあります。 証券取引所では、この注文が3つの原則にもとづいて順番に成立していきます。

指値注文は、売買したい価格を指定して出す注文です。希望の価格で取引できますが、その価格にならなければ売買は成立しません。成行注文は、価格を指定せずに出す注文で、すぐに売買が成立しやすい反面、思ったより高い価格で買ったり、安い価格で売ったりすることがあります。証券取引所では、成行注文は指値注文より優先され(成行注文優先の原則)、指値注文の中では、売りは最も低い価格、買いは最も高い価格が優先されます(価格優先の原則)。 同じ条件の注文が複数あるときは、先に出された注文が優先されます(時間優先の原則)。この3つのルールで行われる通常の取引をオークション方式といいます。

たとえば、「A社株を1株1,800円で100株買う」というのが指値注文で、株価が1,800円以下にならなければ買えません。一方、「A社株をいくらでもいいから100株買う」というのが成行注文で、そのときの売り注文に合わせてすぐに買えます。なお、成行注文が指値注文より優先されるという点は、勘違いしやすいので注意しましょう。

価格を重視するなら指値注文、すぐに売買したいなら成行注文を選ぶのが基本です。それぞれの特徴を知っておくと、思わぬ値段で売買してしまう失敗を防げます。はじめのうちは、指値注文で買う価格を決めておくと安心です。

値幅制限・立会時間・受渡し|約定日から3営業日目に決済

株式の取引には、値幅制限や取引できる時間、お金と株を受け渡す日など、知っておきたいルールがあります。 特に、売買が成立した日から3営業日目に決済されることは押さえておきましょう。

値幅制限とは、株価が急に上がりすぎたり下がりすぎたりしないように、1日に動ける値幅を制限するしくみです。値幅の上限まで上がることをストップ高、下限まで下がることをストップ安といいます。なお、ニューヨーク証券取引所や香港証券取引所には、値幅制限というルールはありません。東証で通常の取引が行われる時間を立会時間といい、午前は9時から11時30分、午後は12時30分から15時30分までです。立会時間の外で行われる取引は、立会外取引と呼ばれます。また、上場株式の株券は電子化されていて、証券保管振替機構(ほふり)と証券会社の口座で電子的に管理されています。そして、売買が成立した日(約定日)を含めて3営業日目に、お金と株式の受渡し(決済)が行われます。

たとえば、月曜日に売買が成立した場合は、月曜日を1日目として数えるので、水曜日が受渡日です。金曜日に売買が成立した場合は、土曜日と日曜日は営業日に含まれないため、祝日がなければ翌週の月曜日が2日目、火曜日が受渡日になります。外国株式でも、国内の証券取引所に上場していて国内委託取引をした場合は、同じく3営業日目が受渡日です。

受渡日は、配当金を受け取る権利を得るタイミングにも関わります。約定日を含めて3営業日目に受渡しと覚え、土日や祝日をはさむ場合は日付がずれることにも注意しましょう。売ったお金をすぐに使いたいときも、受渡日までは引き出せないことがあります。

株式ミニ投資とるいとう|少額で買う方法とドル・コスト平均法

株式は100株単位で買うのが基本ですが、株式ミニ投資や株式累積投資(るいとう)を使えば、もっと少ない金額から買えます。 るいとうでは、ドル・コスト平均法という買い方で、平均の購入単価を抑える効果が期待できます。

株式ミニ投資は、1単元の10分の1の単位で株式を売買する方法です。ただし、もともと取引単位が1株の銘柄には利用できません。株式累積投資(るいとう)は、毎月一定の金額ずつ、積立方式で株式を買う方法です。どちらも指値注文は出せないので、買う価格を自分で指定することはできません。るいとうのように、定期的に一定の金額ずつ買う方法をドル・コスト平均法といいます。一定の金額で買うので、株価が高いときは少しの株数を、株価が安いときは多くの株数を買うことになり、長く続けると平均の購入単価が下がる効果があるといわれています。

たとえば、毎月3,000円ずつ、株価が500円、600円、300円、1,000円と動いたときに買ったとします。買える株数は、6株、5株、10株、3株で、合わせて24株です。4回で使ったお金は12,000円なので、平均購入単価は12,000円÷24株で500円になります。4回の株価を単純に平均すると600円なので、それより100円安く買えたことになります。

まとまったお金がなくても、株式ミニ投資やるいとうなら少額から株主になれます。買うタイミングに迷うなら、ドル・コスト平均法で毎月コツコツ買う方法も検討してみましょう。ただし、株価が下がり続ければ損失が出ることもあり、必ず利益が出る方法ではない点は覚えておきましょう。

少額から積み立てて非課税で運用できる制度は、「新NISAとは?」をご覧ください。

信用取引と株式の指標|リスクと銘柄選びのものさし

信用取引のしくみ|委託保証金と追証、2つの返済方法

信用取引とは、証券会社に委託保証金(担保)を預けて、株式を買うお金や株式そのものを借りて売買する方法です。 自分のお金より大きな金額で取引できる一方で、損失も大きくなりやすいので注意が必要です。

委託保証金は、取引金額の30%以上、かつ30万円以上でなければなりません。 委託保証金は現金のほか、株式や公社債などの有価証券で代用することもできます。ただし、上場株式などは代用できますが、非上場株式などは代用できません。株価が下がって委託保証金が一定の水準を下回ると、追加の保証金(追証)が必要になります。信用取引には、証券取引所の規則にもとづく制度信用取引と、投資家と証券会社の合意にもとづく一般信用取引があり、制度信用取引の返済期限は最長6カ月、一般信用取引は無期限にすることもできます。返済の方法には、反対売買をして差額だけを受け渡す差金決済と、現物株を介した返済(現引き・現渡し)があります。

たとえば、100万円分の株を信用取引で買うなら、委託保証金は30万円以上必要です。60万円分の取引でも、30%の18万円ではなく、最低の30万円以上が必要になります。また、1,000円の株を100株信用買いし、1,200円になったところで反対売買(売り)をすれば、差金の2万円が利益です。反対に800円で売れば、2万円の損失になります。値下がりしそうな株を信用売りし、安くなってから買い戻せば、値下がりでも利益を得られるしくみです。なお、信用取引では、株を借りて先に売る「信用売り」から取引を始めることもできます。

信用取引は、少ない資金で大きな取引ができる反面、損失も大きくなるしくみです。株を始めたばかりのうちは、自分のお金の範囲で買う現物取引から始めるのが安心です。

相場指標|日経平均株価・TOPIXなど市場全体を見る指標

株式市場全体の株価の水準や動きを知るには、日経平均株価やTOPIXなどの相場指標を使います。 ニュースでよく耳にする指標なので、それぞれ何を表しているのかを押さえておきましょう。

日経平均株価(日経225)は、東証プライム市場に上場している銘柄のうち、代表的な225銘柄の修正平均株価です。 東証株価指数(TOPIX)は、東証に上場している銘柄のうち一定の銘柄を対象に、時価総額加重方式で計算する株価指数です。JPX日経インデックス400(JPX日経400)は、資本を効率的に使っているかなど一定の要件を満たした、投資家にとって魅力の高い400社で構成される株価指数です。売買高(出来高)は、証券取引所で売買が成立した株式の総数です。売買高が多いほど、その株がよく取引されていて、売りたいときに売りやすいといえます。また、東証の各市場に上場する銘柄を対象にした市場別指数として、東証プライム市場指数・東証スタンダード市場指数・東証グロース市場指数があります。海外の指標では、米国のナスダック市場の銘柄を対象にしたナスダック総合指数や、ニューヨーク証券取引所やナスダック市場などに上場する代表的な500銘柄を対象にしたS&P500種株価指数が有名です。

たとえば、日経平均株価はプライム市場の全銘柄ではなく、225銘柄だけを対象にしています。一方、TOPIXは時価総額加重方式なので、時価総額の大きな会社の値動きがより強く反映されます。同じ日でも、日経平均株価とTOPIXの動きが少し違うことがあるのは、このように対象や計算方法が違うためです。

相場指標は、市場全体が上がっているのか下がっているのかを知るためのものさしです。日経平均株価は225銘柄の修正平均株価、TOPIXは時価総額加重方式と覚えておくと、ニュースの見方が変わります。毎日少しずつ指標の動きを見ていると、経済の流れも自然とつかめるようになります。

景気と株価の関係など、経済の基本は「金融資産運用の第一歩|GDP・日銀短観・金融政策の基本」で解説しています。

投資判断に使う指標|PER・PBR・ROE・配当利回り・配当性向

個別の会社の株を選ぶときは、PER・PBR・ROE・配当利回り・配当性向などの指標が判断の手がかりになります。 計算式を知っておくと、株価が割安か割高か、会社が効率よく稼いでいるかを比べられます。

PER(株価収益率)は、株価が1株あたり当期純利益の何倍かを表し、低いほど割安とされます。PBR(株価純資産倍率)は、株価が1株あたり純資産の何倍かを表し、1倍を下回ると、株価が解散価値を下回っていることを示します。ROE(自己資本利益率)は、当期純利益÷自己資本(純資産)×100で求め、株主が出したお金でどれだけ利益を上げたかを表します。配当利回りは1株あたり配当金÷株価×100、配当性向は配当金総額÷当期純利益×100で求めます。配当性向は、稼いだ利益のうちどれだけを株主に還元したかを表します。そのほか、総資本に対する自己資本の割合を表す自己資本比率や、総資本の運用効率を表す総資本回転率(売上高÷総資本)も使われます。

たとえば、A社の株価が600円、当期純利益が60億円、純資産が500億円、発行済株式数が2億株、1株あたりの配当金が15円だとします。1株あたり利益は30円なのでPERは20倍、1株あたり純資産は250円なのでPBRは2.4倍です。ROEは60億円÷500億円×100で12%、配当利回りは15円÷600円×100で2.5%です。配当金の総額は15円×2億株で30億円なので、配当性向は30億円÷60億円×100で50%になります。

同じ業種の会社どうしで比べると、指標の高い・低いがより判断しやすくなります。1つの指標だけで判断せず、いくつかの指標を組み合わせて見ることが大切です。PER・PBRは割安さ、ROEは稼ぐ力、配当利回りと配当性向は株主への還元を表すと整理しておきましょう。PERとPBRの覚え方は、PERとPBRの効果的な覚え方2選|2つの違いとそれぞれの示すものを解説!でくわしく紹介しています。

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まとめ|株式のしくみを知って自分に合った投資を始めよう

株式投資のポイントを振り返ろう

株式投資は、しくみやルールを知ってから始めることで、思わぬ失敗を防ぎ、安心して続けられます。株価は毎日変わるので、ルールを知って落ち着いて判断することが大切です。 最後に、この記事のポイントを振り返りましょう。

株式を買うと株主になり、議決権、剰余金分配請求権、残余財産分配請求権の3つの権利を持ちます。売買は原則として100株単位で、東証にはプライム・スタンダード・グロースなどの市場があります。注文には指値注文と成行注文があり、成行注文優先・価格優先・時間優先の3つの原則で売買が成立します。受渡しは約定日を含めて3営業日目です。株式ミニ投資やるいとうなら少額から買え、るいとうはドル・コスト平均法で平均購入単価を抑えられます。信用取引は、取引金額の30%以上かつ30万円以上の委託保証金が必要で、制度信用取引の返済期限は最長6カ月です。

たとえば、まとまったお金がないうちは、るいとうで毎月少しずつ買い、慣れてきたら100株単位の売買に進む、という始め方もあります。銘柄を選ぶときは、日経平均株価やTOPIXで市場全体の流れをつかみ、PER・PBR・ROE・配当利回り・配当性向で会社を比べてみましょう。信用取引は、しくみとリスクを十分に理解してから検討するのがおすすめです。

株式のしくみとルールを理解して、自分に合った方法で投資を始めることが、株式投資を長く続けるための近道です。まずは気になる会社の株価と指標を調べるところから始めてみてください。

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