「ライフイベント表・キャッシュフロー表・個人バランスシート、名前は覚えたけれど、結局どう使い分ければいいのか分からない」FP試験の学習を進める中で、そんなもどかしさを感じたことはありませんか。3つの表はそれぞれ役割も計算式も異なるため、なんとなく眺めているだけでは得点につながりません。
この記事では、ライフプランニングの6つの手順から、3つのツールの具体的な作り方、可処分所得や金融資産残高を求める計算式、そして「時価か取得価額か」「変動率をかけるかどうか」といった間違えやすいポイントまで、順を追って解説します。読み終える頃には、計算問題を見ても迷わず式を組み立てられるようになっているはずです。
まずは、ライフプランニングの全体像を押さえるところから始めましょう。
1. ライフプランニングとは?6つの手順と3つのツールを押さえよう
1-1. ライフプランニングの6ステップの手順
ライフプランニングは、決まった手順に沿って進めることで、顧客の将来の夢や目標を実現可能なプランに落とし込む作業です。手順があいまいなまま進めると、聞き取った情報がバラバラなまま分析に進んでしまい、プランの精度が落ちてしまいます。行き当たりばったりでアドバイスをしても、顧客が本当に必要としている対策にたどり着けないことも少なくありません。
FPがライフプランニングを行う場合、まず①顧客との信頼関係を確立し、②年収や家族構成、資産状況といった顧客データを収集して目標を明確にします。そのうえで、③集めたデータをもとに現状の問題点を分析し、④問題点を解決するための対策とプランを立案します。プランが固まったら⑤実行を支援し、⑥ライフステージの変化や経済状況の変化に合わせて定期的にプランを見直す、という流れで進みます。⑥の見直しまでを一連の流れに含めている点が特徴で、プランを立てて終わりではなく、実行後も継続的に関わり続けることが前提になっています。
たとえば、住宅購入と子どもの教育資金の両方を望む家庭であれば、②の段階で収入・支出・保有資産を正確に把握できていないと、③の分析で「住宅ローンを組んだ場合に教育資金が不足する時期がいつ来るか」といった重要な問題点を見逃してしまいます。結果として④で立てるプランも的外れなものになりかねません。手順を飛ばさずに進めることが、実現可能なプランを作るための土台になります。
このように、ライフプランニングは①関係構築→②データ収集→③現状分析→④プラン立案→⑤実行支援→⑥定期的な見直し、という6つのステップで構成される一連のプロセスだと理解しておきましょう。試験では、この6ステップの順序や内容を問う問題も出題されるため、番号だけでなく、それぞれの段階で何を行うのかまでセットで覚えておくと安心です。
1-2. 手順の中で使う3つのツール(ライフイベント表・キャッシュフロー表・個人バランスシート)の全体像
先ほどの手順のうち、③の現状分析で使うのが、ライフイベント表・キャッシュフロー表・個人バランスシートという3つのツールです。この3つを使い分けられるかどうかが、ライフプランニング分野の得点力を左右するといっても過言ではありません。
3つのツールにはそれぞれ役割があります。ライフイベント表は将来のイベントと必要資金を時系列で整理する表、キャッシュフロー表は将来の収支と金融資産残高の推移を予測する表、個人バランスシートはある時点での資産と負債のバランスを確認する表です。役割が異なるため、どれか1つだけでは顧客の状況を正しく把握できません。3つを組み合わせることで初めて、顧客の「今」と「これから」の両方を立体的に把握できるようになります。
たとえば、ライフイベント表で「10年後に子どもが大学に入学する」という情報を整理しても、そのとき家計にどれだけの余裕があるかはキャッシュフロー表を作らなければ分かりません。同様に、現時点でどれだけの純資産があるかは個人バランスシートを見なければ判断できません。仮にキャッシュフロー表だけを作成しても、将来のイベントが整理されていなければ、そもそも何のために収支を予測しているのかが見えなくなってしまいます。3つのツールは互いに補い合う関係にあると押さえておきましょう。
次の章では、この3つのツールを実際にどう作成するのか、具体的な手順と計算方法を見ていきます。それぞれの表が何を目的に作られているのかを意識しながら読み進めると、計算式の意味も理解しやすくなります。
2. 3つのツールの具体的な作り方をマスターしよう
2-1. ライフイベント表の作り方(将来のイベントと必要資金を時系列で整理)
ライフイベント表とは、家族の将来のライフイベントと、それに必要な資金の額を時系列にまとめた表です。この表を作成することで、将来の夢や目標を具体的な数字として可視化できます。頭の中だけで漠然と考えていたライフイベントを、いつ・誰に・いくら必要かという形で書き出すことに大きな意味があります。
作り方はシンプルで、横軸に経過年数(または西暦)を取り、縦軸に家族一人ひとりの年齢と、その年に予定されているイベントを書き出していきます。たとえば「子どもの小学校入学」「車の買い替え」「独立・開業」といった、家族それぞれのライフイベントを、それが起こる年に対応させて記入します。必要に応じて、そのイベントにかかる金額もあわせて書き込みます。年齢とイベントを一つの表にまとめることで、家族全員のライフイベントを同じ時間軸上で見比べられるようになります。
具体的には、現在40歳の父・37歳の母・6歳の子どもがいる家庭であれば、1年後に子どもが7歳で小学校入学、7年後に13歳で中学校入学、10年後に16歳で高校入学、というように年齢と対応させてイベントを並べていきます。あわせて3年後・8年後に車の買い替えを予定していれば、その年の欄に記入します。こうして並べてみると、教育費と車の買い替え費用が同じ年に重なるタイミングも一目で見つけられます。年齢とイベントを時系列で並べることで、資金が必要になるタイミングが一目で分かるようになります。
このライフイベント表が、次に説明するキャッシュフロー表を作成するための土台になります。先にライフイベント表で「いつ・何に」お金が必要になるかを整理しておくことで、キャッシュフロー表の支出欄を組み立てやすくなります。
2-2. キャッシュフロー表の作り方と将来価値の計算式(変動率の考え方)
キャッシュフロー表とは、ライフイベント表と現在の収支状況にもとづいて、将来の収支状況と金融資産残高の予想をまとめた表です。この表を作ることで、何年後にお金が足りなくなりそうかを事前に把握でき、対策を早めに打てるようになります。
キャッシュフロー表では、収入欄に給与収入などの金額を、支出欄に基本生活費などの金額を記入し、それぞれに変動率を設定します。変動率とは変化の割合のことで、給料であれば昇給率、基本生活費であれば物価上昇率を用いるのが一般的です。ただし、保険料のように金額が固定されているものには変動率を加味しません。将来の金額は「n年後の金額=現在の金額×(1+変動率)のn乗」という式で計算します。この式は、預貯金の複利計算と同じ考え方だとイメージすると理解しやすくなります。
たとえば、現在の給与収入が600万円で変動率(昇給率)を1%とすると、1年後は600万円×1.01=606万円、2年後は600万円×1.01の2乗≒612万円、3年後は600万円×1.01の3乗≒618万円と計算できます。さらに、その年の金融資産残高は「前年の金融資産残高×(1+変動率または運用利率)±年間収支」で求められます。現在の金融資産残高が500万円、変動率1%、1年後の年間収支が99万円だとすると、1年後の金融資産残高は500万円×1.01+99万円=604万円です。2年後の年間収支が101万円であれば、604万円×1.01+101万円≒711万円というように、前年の答えを次の年の計算に使い回していく点も特徴です。この2つの計算式を確実に使えるようにしておくことが、キャッシュフロー表を扱ううえでの最重要ポイントです。
これらの計算は試験でも頻出するため、電卓を使って自分の手で何度か計算してみることをおすすめします。一度計算の流れを手で追っておくと、本番でも迷わず数字を当てはめられるようになります。
2-3. 可処分所得の計算方法(年収から社会保険料・税金を差し引く)
キャッシュフロー表の収入欄には、年収ではなく可処分所得を記入するのが基本です。額面の年収をそのまま使ってしまうと、実際に使えるお金より多い金額でプランを立てることになり、将来の資金不足を見落とす原因になります。
可処分所得は「年収-(社会保険料+所得税+住民税)」という式で計算します。社会保険料には健康保険料・厚生年金保険料・雇用保険料などが含まれます。一方で、個人年金保険料や火災保険料といった任意加入の保険料は、この計算には含めません。任意加入の保険料はあくまで個人の選択で支払っているものであり、年収から強制的に差し引かれる社会保険料や税金とは性質が異なるためです。ここを混同してしまうと計算結果がずれてしまうため、注意が必要です。
たとえば、年収850万円の人の税金等の支出が、所得税・住民税80万円、健康保険料37万円、厚生年金保険料69万円、雇用保険料5万円、個人年金保険料24万円、火災保険料10万円だったとします。この場合の可処分所得は、850万円-(80万円+37万円+69万円+5万円)=659万円です。個人年金保険料と火災保険料は社会保険料にも税金にも該当しないため、計算には使いません。仮にこの2つも差し引いてしまうと625万円という誤った答えになってしまいます。「社会保険料+所得税+住民税」だけを差し引くという範囲を正確に覚えておくことが、計算問題を得点源にするコツです。
可処分所得の計算は単純な引き算ですが、どの項目を含めるかを正確に覚えていないと得点できない分野なので、問題文に出てくる項目を一つずつ「含めるか含めないか」で仕分けしながら解く練習をしておきましょう。
3. ライフプランニングでつまずきやすいポイントと試験の狙われどころ
3-1. 個人バランスシートの資産・負債は「時価」で記入する(取得価額との違いに注意)
個人バランスシートは、ある時点における資産と負債のバランスを見るための表で、資産・負債の金額はすべて時価で記入するのが原則です。この原則を取得価額と混同してしまうと、正しい純資産額を把握できなくなります。
個人バランスシートの資産には、現金・預貯金・株式・投資信託・生命保険(解約返戻金相当額)・自宅(土地・建物)・車などが含まれ、負債には住宅ローンや車のローンなどが含まれます。資産合計から負債合計を差し引いた金額が純資産です。ここで重要なのは、資産と負債の金額を「今売ったらいくらになるか」という時価で記入する点で、購入したときの価格である取得価額を使うわけではありません。生命保険についても、支払った保険料の総額ではなく、今解約した場合に戻ってくる解約返戻金相当額で記入する点も同じ考え方です。
たとえば、10年前に3,000万円で購入した株式等の金融資産や不動産があるとしても、個人バランスシートに記入するのは購入時の3,000万円ではなく、現時点で売却した場合の評価額です。仮に今の評価額が2,500万円であれば、記入するのは2,500万円になります。「株式等の金融資産や不動産の価額は、作成時点の時価ではなく取得時点の価額で計上する」という記述は誤りであり、正しくは時価で計上します。この「時価か取得価額か」という論点は選択肢の正誤を問う形で繰り返し出題されるため、時価で記入するという原則を確実に押さえておきましょう。
資産・負債の金額を時価で正しく記入できれば、その時点での本当の家計の健全性を把握できます。逆に取得価額のまま記入してしまうと、含み益や含み損が反映されず、実態とかけ離れたバランスシートになってしまう点にも注意が必要です。
3-2. 変動率を使う項目・使わない項目の見分け方(保険料など定額項目の注意点)
キャッシュフロー表を作るうえで見落としがちなのが、変動率を加味する項目と加味しない項目の区別です。この区別を誤ると、将来の収支予測全体が不正確になってしまいます。
給与収入や基本生活費のように、時間の経過とともに金額が変化していくと考えられる項目には、昇給率や物価上昇率といった変動率を設定します。一方で、保険料のようにあらかじめ金額が固定されている、いわゆる定額で支払うものには、変動率を加味しません。つまり、すべての項目に一律で変動率をかければよいわけではなく、その項目の性質を見て判断する必要があります。住居費についても、住宅ローンの返済額のように毎月一定額であれば、変動率を加味せず横に同じ金額を並べていく扱いになります。
たとえば、基本生活費や教育費には物価上昇率にあたる変動率を設定して将来の金額を増やしていく一方、保険料や住宅ローンの欄は毎年同じ金額のまま横に並べていく、という扱いの違いが出てきます。この違いを意識せずにすべての支出項目へ変動率をかけてしまうと、将来の支出額を実際より大きく見積もってしまい、キャッシュフロー表全体の精度が下がります。反対に、本来なら変動率をかけるべき教育費にかけ忘れると、将来必要な金額を少なく見積もってしまう危険もあります。「定額で支払うものには変動率を加味しない」という一文を、項目ごとの判断基準として覚えておくことが大切です。
このポイントは計算問題の中でさりげなく問われることが多いため、表の中のどの項目が定額なのかを意識しながら計算する習慣をつけておきましょう。
3-3. 試験でよく出る計算パターンと誤りやすい選択肢の例
ライフプランニングの手法に関する問題では、計算式そのものよりも、計算の前提条件を正しく読み取れているかが問われる傾向があります。式を暗記していても、どの数字をどこに当てはめるかを誤ると正解にたどり着けません。
よく出題されるのは、「n年後の金額=現在の金額×(1+変動率)のn乗」を使った将来価値の計算、「前年の金融資産残高×(1+変動率)±年間収支」を使った金融資産残高の計算、そして可処分所得の計算の3パターンです。いずれも計算式自体は単純ですが、変動率をかける対象を取り違えたり、可処分所得の計算に含めるべきではない項目(個人年金保険料や火災保険料など)を誤って含めてしまったりするミスが起こりやすい部分です。金融資産残高の計算では、年間収支がマイナスになる年もあるため、プラスとマイナスの符号を間違えないことも大切です。
たとえば、個人バランスシートに関する問題で「資産や負債の価額は、作成時点の時価ではなく取得時点の価額で計上する」という記述が出てきた場合、これは誤りの選択肢です。正しくは時価で計上します。同様に、可処分所得を求める問題で個人年金保険料や火災保険料を差し引いてしまうと、誤った答えになります。金融資産残高の計算問題でも、変動率をかける前に年間収支を足してしまうなど、計算の順序を誤ると答えがずれてしまいます。このように、計算問題では「どの項目を計算に含めるか・含めないか」という条件の見極めが、正答率を大きく左右します。
過去問を解くときは、計算式を当てはめる前に、まず問題文の条件を丁寧に整理する習慣をつけておくと、ケアレスミスを減らせます。
4. まとめ:ライフプランニングの手法をおさらいしよう
4-1. 3つのツールと計算式の要点整理
ここまで、ライフプランニングの6つの手順と、そのなかで使う3つのツールについて解説してきました。ライフプランニングは、①関係構築から⑥定期的な見直しまでの6ステップで進み、その中の現状分析の段階でライフイベント表・キャッシュフロー表・個人バランスシートという3つのツールを使う、という全体の流れをまず押さえておきましょう。
計算式については、将来価値を求める「現在の金額×(1+変動率)のn乗」、金融資産残高を求める「前年の金融資産残高×(1+変動率)±年間収支」、そして「年収-(社会保険料+所得税+住民税)」で求める可処分所得の3つが中心です。あわせて、個人バランスシートの資産・負債は時価で記入すること、保険料や住宅ローンなど定額の項目には変動率を加味しないことも、間違えやすいポイントとして覚えておく必要があります。この3つの表と3つの計算式はセットで出題されることが多く、どれか一つが抜けているとうまく解答できません。
これらの計算式と注意点はセットで覚えることで、初めて得点力につながります。式だけを暗記するのではなく、どの数字をどの式に当てはめるのか、どの項目を計算に含めるのかまで含めて理解しておきましょう。
4-2. 次に学ぶべき内容(資金計画の6つの係数)への橋渡し
ライフプランニングの手順とツールの使い方を理解できたら、次に学ぶべきは資金計画を立てる際に使う6つの係数(終価係数・現価係数・年金終価係数・減債基金係数・資本回収係数・年金現価係数)です。今回学んだ「現在の金額×(1+変動率)のn乗」という将来価値の考え方は、6つの係数を理解するための土台にもなります。
6つの係数は名前が似ていて混同しやすい分野ですが、今回のキャッシュフロー表の計算式と考え方がつながっている部分も多いため、続けて学習することで理解がスムーズになります。特に、複利で将来の金額を求める考え方は、6つの係数のうち終価係数の考え方とほぼ同じです。ライフプランニングの手法をしっかり押さえたうえで、次のステップに進んでいきましょう。

